Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
   
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⑤フランス編 ブドウの品種 Cépage

 西アジアが原産といわれるブドウは今や世界中に広がり、ワイン用はもちろん生食や干しブドウ、ジュースなどに向いた様々な品種が生まれ、受け継がれてきました。新たな品種を生み出す努力は現在も世界各地で続けられています。
 フランス語でワイン用ブドウ品種はCépage(セパージュ)といいます。筆者の手元にある2011年の資料では、補助品種も含めるとフランスでは518種ものブドウがワイン用品種として登録されていますが、交配種や変種が次々と生み出されているため農務省のワイン担当官ぐらいしか正確な数はわからないというのが本当のところでしょう。
 ワインに力を入れている飲食店などではワインリストに品種名を併記するところが増えてきたのはとてもいいことです。筆者は飲みたいワインをブランドや生産地、AOCの有無だけで選ぶということはまずなく、使われている品種にまず目を向けます。好みのワインの味の決め手は第一に品種だということがわかってきたからです。AOPやIGPのワインにはエチケットに品種名や使用割合を表示することがEU規則で義務付けられていますから、飲んでおいしいと思ったワインは生産者や収穫年、アペラシオンだけではなく、品種も必ずメモしておくことをお勧めします。
 500以上もの品種すべてを紹介することは筆者の手に余りますので、フランスの主要な品種だけを以下に紹介していきます。文中に原産地名や生産者名が出てくることがありますが、各アペラシオンについてはのちほどまとめて紹介しますので今は読み飛ばして下さい。
 なお、品種の正式な登録名称には後ろにnoir(黒)、blanc(白)、rosé(バラ色)、gris(灰色)といった単語がつきますが、エチケットに記載されるときはPinot NoirやSauvignon Blancなど一部を除いて省略されますので、ここではそれに従います。

・赤ワイン用の品種cépages noirs(セパージュ・ノワール=黒ブドウ)
Auxerrois(オクセロワ):Malbecのカオールでの呼び名。同項参照。
Cabernet Franc(カベルネ・フラン):ボルドーの品種。明るい色合いで、木苺などの芳香がある。サンテミリオンではブーシェBouchet、ロワールではブルトンBreton、マディランではブーシーBouchyと呼ばれる。補助品種として使われることが多い。

Cabernet Sauvignon(カベルネ・ソーヴィニョン):カベルネ・フランとソーヴィニョン・ブランをかけ合わせた品種。ボルドーの中心的品種だが、黒ブドウの国際的品種として、新大陸も含めこの品種が栽培されていない国はない。晩熟だが、力強くなめらかなタンニンをもち、長期熟成に向くワインができる。

Carignan(カリニャン):スペインでカリニエーナと呼ばれるアラゴン地方原産種。フランスの地中海沿岸全体で栽培され、栽培面積が最も広い。多産で、色の濃いタンニンの強いワインができる。他品種とのアッサンブラージュに向く。老木から収量を抑えて造った単一品種ワインは濃密さが貴重。

Cinsault(サンソー):大粒で果皮が薄く生食もされる。フランス南西部で栽培が多い。シャトーヌフ・デュ・パフやジゴンダスでは補助品種として繊細な味わいを出すために用いられ、タンニンが少ないため、タヴェルのロゼにも使われている。

Cot(コット):マルベックMalbecのロワールや南西部での呼び名。それらの生産地では補助品種に。同項参照。

Gamay(ガメ):ボージョレやロワールで使われる品種。早熟・多産種のため最近はフランス全土に栽培地域が広がっているが、大量生産ワインになることが多くロワールの安ワインの代名詞にもなっている。ただ、クリュ・ボージョレと呼ばれる10の村の花崗岩土壌で栽培した肉付きのよいブドウで造られ、熟成期間を経て出荷されるボージョレ・ヴィラージュはしっかりしたボディを持っている。ブルゴーニュのパストゥーグランやマコンの赤などAOPワインの原料にもなる。

Grenache(グルナッシュ):世界第2位の栽培面積を持つブドウで、スペイン原産のガルナチャのフランス名。多収量で糖度が高く長熟タイプのワインができるためコート・デュ・ローヌの主要品種。ローヌ南部からラングドック・ルションで多く栽培される。イタリアでも南部・東部の人気品種で、サルデーニャ島ではカンノナウと呼ばれる。

Grolleau(グロロー):Groslot(グロスロ)とも呼ぶ。 ロワールのロゼ・ダンジューなどロゼワインの原料となるほか、フルーティーな赤ワイン用としても使われる。スミレや西洋スグリのような赤い果実を思わせる繊細なアロマとわずかなタンニンの骨組みをもつ若いうちにおいしく飲めるワインになる。

Malbec(マルベック):元来ボルドーの品種と考えられているが、ほぼフランス全土で栽培されている。色が濃く、タンニンが強いので、ボルドーではブレンドに用いられることが多い。ロワール河流域ではコットCot。カオールではオクセロワAuxerrois。Auxerrois100%で作られるカオールは特にvin noir(黒いワイン)と呼ばれ、長熟タイプの強いワインとして有名。
現在この品種が注目されているのはアルゼンチンとチリ。完熟したマルベックからつくられるアルゼンチンのワインは香り高く長熟で、カオールにも匹敵する。

Merlot(メルロー):黒ブドウの国際品種。Cabernet Sauvignonより栽培が容易で大粒で早熟。ボルドーのサンテミリオンやポムロルの主要品種。派手さは少ないが、まろやかで濃厚なタイプのワインとして人気。近年メルロー100%のイタリアワインも注目されている。Mondeuse(モンドーズ):サヴォワだけにみられる黒ブドウ品種。色が濃く、フルーティーかつスパイシーな個性の強いワインになる。5年以上熟成したものはvin montagne(山のワイン)と呼ばれる。

Mourvedre(ムールヴェドル):プロヴァンスやローヌ南部で栽培されているが原産はスペインとされている。栽培が難しく収量も少ないが、香り、味わいとも組成のしっかりしたワインになるためコート・デュ・ローヌの主要品種の一つとなっている。
Pinot d'Aunis(ピノ・ドーニス):ロワールで最も古い品種といわれ、フランボワーズやコショウのニュアンスを持つ軽いロゼになる。Chenin noir(シュナン・ノワール) とも呼ばれる。

Pinot Meunier(ピノ・ムニエ):meunierは「粉屋」のこと。熟すと果皮に白く粉をふくので、この名がついたといわれる。酸味は少なく粗削りだが、シャンパーニュの主要品種の一つである。

Pinot Noir(ピノ・ノワール):ロマネ・コンティ、ラターシュ、リシュブール、シャンベルタンなどブルゴーニュの著名な赤ワインは全てピノ・ノワールの単一品種で造られる。タンニンが絹のようになめらかで、繊細で複雑な芳香を醸し出す。また、シャンパーニュの主原料でもある。世界中に栽培が広がっているが、他の地方、国ではブルゴーニュに匹敵するものはなかなかできない。ごく最近、カリフォルニアの幾つかのワイナリーの赤がロマネ・コンティに匹敵すると話題になったが、飲み比べできる身分の人にしか真偽のほどはわからない。

Syrah(シラー):赤ワイン用の国際品種。別名Hermitage(エルミタージュ)。主としてコート・デュ・ローヌ全域で栽培され、ローヌ北部ではコート・ロティやサン・ジョゼフ、エルミタージュなど長熟タイプの強い単一品種ワインになる。ローヌ南部ではGrenache、Mourvedreとともに主要品種の一つである。かつては、ボルドーでも色の濃いワインを造るためにエルミタージュがブレンド用に使われたが、AOPの規定により現在ボルドーでは栽培されていない。また、オーストラリアではShiraz(シラーズ)と呼ばれ高級赤ワインの品種として定着している。

Tannat(タナ):バスク地方原産といわれ、品種名は強いタンニンを持つことに由来する。丈夫な品種で収量も多い。南西部のマディランに使われ、よくできたものはフルボディの長熟ワインになる。フランスでの栽培面積は減少しているが、バスクからの移民が苗木を持ち込んだとされるウルグアイでは広大な畑があり、色濃くタンニンの豊かな個性際立つワインが作られている。最近はアルゼンチンにも栽培が広がっている。


カベルネ・フラン  カベルネ・ソーヴィニョン カリニャン
サンソー ガメ グルナッシュ
グロロー マルベック(オクセロワ) メルロー
モンドーズ ムールヴェドル ピノ・ドーニス
ピノ・ムニエ ピノ・ノワール シラー
タナ
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