Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
   
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④ワインのラベル
 
ボトルに貼ってあるラベルのことはフランス語ではエチケット(Étiquette)といいます。エチケットにはそのワインの格付け、生産者、生産地、収穫年、ブドウの品種などの情報が詰まっていますからとても大事なもので、その情報をちゃんと読み取れば瓶の中のワインがどんなものかだいたいわかるという優れものです。ただ、表ラベルにすべての情報が記載されているわけではなく、品種や熟成の方法、飲み頃温度などは裏ラベルに記載されていることが多いので裏ラベルも大切です。日本で海外産のワインを買うと、生産者が貼った裏ラベルの上に日本語の裏ラベルが貼られていることが多くてがっかりすることがしばしばなのであれはぜひやめてもらいたいと思います。
まずはエチケットを読めるようになりましょう。


・ワインの品質
最初にフランス語のラベル(label 品質保証票)によるワインの格付けから。
例えばコート・デュ・ローヌのシャトー・ヌフ・デュ・パプなどちょっといいワインを手に取ってエチケットを見ると、どこかにAppellation Châteauneuf-du-Pape contrôléeという表記があるはずです。これは広大なブドウ産地を持つローヌ川流域の中でシャトー・ヌフ・デュ・パプ村の生産者が村内で収穫したブドウだけを使い、定められた製法で作ったワインであるということを国家が保証したことを示します。この「産地名」のところがCotes-du-Rhoneとなっているワインもありますが、ローヌ川流域の複数の町村で収穫されたブドウを使ったものであることを示しています。さらに、一軒の生産者名、あるいはただ一つの畑の名になっている場合もあって、その希少性と抜きんでた品質により最高級という評価を得ています。なかなか複雑ですね。
これがチーズだとチーズの名称とAppellation d'origine contrôléeまたはAOCのロゴマークの表示になるという違いがあります。ワインのように10年以上も寝かせるなどということはありませんから生産年が重視されることはなく、消費者の評価はフェルミエやアルパージュなどそのチーズが作られた環境や熟成士の腕に重きを置くことになります。
チーズのお話の時にもAOC(ア・オ・セー)やAOP(ア・オ・ペー)のことを書きましたが、少しおさらいしておきましょう。


・フランスのワイン法
AOC(Appellation d'origine contrôléeアペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ「原産地呼称統制」)はフランス農務省が法律に基づいて付与するラベルだということは覚えていますね。1935年に生産者、消費者の代表と行政官をメンバーに設置されたINAO(Institute National des Appellations d’origine アンスティチュート・ナスィオナル・デザペラスィオン・ドリジーヌ「原産地呼称委員会」)という機関が審査しますが、そのルーツは1925年にロックフォールチーズの名称を保護する判決が確定したことによるということも思い出してください。ただINAO自体はワインの品質保持と原産地呼称保護のために設立されたもので、AOCは本来ワインのためにつくられたラベルなのですが、チーズを含む農水産品全体に適用されるようになったのです。
ワインの場合、AOCに次ぐラベルとしてVDQS(ヴェー・デー・キュー・エス vin délimité de qualité superieurヴァン・デリミテ・ドゥ・カリテ・シュペリウール「産地限定上質ワイン」)、VCC(ヴェー・セー・セー vin de consommation couranteヴァン・ドゥ・コンソマシオン・クーラント「日常消費ワイン」一般的にvin de payヴァン・ドゥ・ペイ「産地ワイン」と呼ばれる)とvin de tableヴァン・ドゥ・ターブル(テーブルワイン)という格付けがありました。
1992年にEUが発足すると、AOCに代わるEU共通のラベルとしてEU規則によりAOP(Appellation d'origine protégée アペラシオン・ドリジーヌ・プロテジェ「原産地呼称保護」)が創設され、それまでのAOC認証製品はすべてAOPに変わりました。それに伴ってAOPに次ぐ品質を保証するIGP(イ・ジェー・ペーIndication géographique protégée アンディカシオン・ジェオグラフィーク・プロテジェ「地理的表示保護」)というラベルが作られ、ワインについてはVDQSとVCCが廃止され、VDQSは2011年までにすべてAOPに昇格、VCCはIGPに表示が変わりました。もちろん2011年以前に瓶詰めされたワインのエチケットには旧表示が残っていますし、AOPワインのうち以前からAOC認証を得ていたワインはAppellation + 産地名 + contrôléeの表示を続けてもEU規則には抵触しないことになっています。VDQSからの昇格ではないというプライド、あるいはAOPの審査基準がAOCの時より甘くなったということへの反発があるのだと思います。
上に述べたような国による法的な格付けとは別に、ボルドーやブルゴーニュには産地独自の格付けがあります。
ボルドーの場合、優れたワインにはエチケットにGland vin(偉大なワイン)と表示することが許されますが、それ以上に生産者にとって重要なのは生産者に与えられる1級から5級までの格付けで、特に1級格付けはボルドー全体で5軒の生産者にしか認められていません。
ブルゴーニュの場合は生産者ではなく、クリマという概念によって畑が特級と1級に格付けされています。1軒の生産者の所有する複数の畑で格付け等級が違う場合や、複数の生産者が所有する広い畑が同じ等級に格付けされている場合があります。
詳しくはあとで各AOCワインを紹介するときに書きますが、今はボルドーでは生産者が格付けされ、ブルゴーニュでは畑が格付けされるということだけ覚えておけばいいでしょう。
こういった格付けとは別に、以前からあるものですが最近の健康志向で人気が高まっているビオワインBIO(vin issu de la viticulture biologiqueヴァン・イシュー・ドゥ・ラ・ヴィティキュルチュール・ビオロジーク「有機栽培ブドウ由来のワイン」)があります。チーズのお話の時フランスのラベルについて紹介した中に出てきたAB(agriculture biologiqe「有機農法」)というラベルとよく似たものですが、わざわざviticulture(ブドウ栽培)という単語を使って区別しているのはフランス人の「食」へのこだわりを示しているのでしょう。ビオワインの中には単に無農薬有機栽培というだけではなく、地形や風の流れ、天体の運行まで考慮したbio-dynamie(ビオ・ディナミ)というワインもあります。
もうひとつ、これからのお話の中で取り上げることはありませんが、エチケットに産地名の表示がなく単にVin de France(フランスワイン)とだけ書かれているものは国内各地から集めた原酒や法で定められた割合の輸入ワインをブレンドしてフランス国内で生産されたワインで、一概にまずいとは言いませんが最も安酒に属するものです。

シャトー・ヌフ・デュ・パプ

 ドメーヌ・ラ・ロケット2008 表エチケットと裏エチケット
AOCのロゴマーク AOPのロゴマーク IGPのロゴマーク
BIOワインのロゴマーク

 

 BIODYNAMIEのロゴマーク