Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
   
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・ワインの生産年

 エチケットに表示されている重要な情報に生産年があります。生産年のことをヴィンテージということもありますが、フランス語では
Millésime(ミレジム)といいます。安いワインの中には生産年が記載されていないものもありますが、それらは異なる年のワインをブレンドしてどうにか飲めるようにしたものだと考えたほうがよろしいでしょう。唯一の例外はシャンパーニュで、収穫年の違う原酒をブレンドして味を調整するため通常生産年は入っていません。シャンパーニュで生産年の入っているものは、クリュッグなど最高級ブランドで特にブドウの出来が良かった年の選りすぐりの原酒だけでごく少量生産された特別なものですから大変高価です。
生産年はすなわちブドウが収穫された年で、醸造してから何年も樽熟成するワインもありますから瓶詰めした年ではありません。雨や日照時間、気温など気象条件に左右されるブドウのできによって年ごとのワインのできにも差が出ます。また、ワインによって「飲みごろ」の目安というものがあって、新酒のうちに飲むべきワインや10年以上寝かせてやっと抜栓できるワインまでいろいろあります。同じ銘柄のワインでも生産年によって寝かせておける期間が違うこともあります。ワイン好きが生産年にこだわるのはそのためですが、エチケットを見ただけでその年のワインの良し悪しがわかるかといえばそうはいきません。
 いちばん手っ取り早いのはちゃんとしたワインショップでソムリエやワインエキスパートといった人に教えてもらうことです。しかしお店の人の実力も様々ですし、どうしても買ってもらうほうに力が入ってしまいますから、自分である程度判断できるならそれに越したことはありません。その方法を教えましょう。
 まず、ロバート・パーカーRobert M. Parker, Jr.などに代表されるワイン評論家の書いたものを参考にするという手があります。ワインショップなどで「パーカー〇〇ポイント」などと書かれているワインをよく見かけますが、ある程度の参考にはなるでしょう。ほかにも著名なソムリエの著書や動画サイトなど参考にできるものはたくさんあります。しかし、こういった評価は突き詰めてしまえば個人の好みの反映で、すべての銘柄を網羅したものでもありませんから、筆者はほとんど参考にしません。
 ではどうするか。筆者はフランスワインが好きなので、銘柄ではなくフランスのAOP生産地全体の公式な評価をまず参考にします。インターネットでVin français bénéficiant d'une AOCというフランスのサイトを検索すると、Liste des vins français sous AOC et AOPというフランスのAOC・AOPに認証されているすべてのAppellation(原産地)の一覧表があります。そこからほとんどのAppellationの紹介ページにワンクリックで跳んで行けるのですが、多くのページにはMillésimesという項目があって、ここ数十年から100年ぐらいのワインの出来の産地における公式評価が一覧になっています。
 評価は、
Année exceptionnelle(アネー・エクセプシオネル=卓越した、並外れた年 金星)Grande année(グランダネー=優れた、偉大な年 銀星)Bonne année(ボンナネー=よい年 星三つ)Année moyenne(アネー・ムワイエンヌ=中程度の年 星二つ)Année médiocre(アネー・メディオクル=平凡な年 星一つ)の順になっており、当然ながら悪い年というのはありません。これが一つの指標になります。
 これらのサイトはなかなかの優れもので、赤、白、ロゼなどそれぞれの飲み頃や、食卓に供するときの適温、相性のいい料理などの情報も得られます。また、そのアペラシオンの気候風土、歴史などの情報が満載で、生産者のリストから各々のホームページにリンクすると、特徴、原料となるブドウ品種や使用割合、醸造や熟成の方法などほぼすべての情報に接することが可能です。
まあ筆者など、そこまで読み取ろうとすると辞書と首っ引きで四苦八苦ということになりますので、Millésimesの表だけでも眺めることにしていますが、いくつも見ていくとどうやらここ30年くらいは多くの産地で1の位が0か5の年がAnnée exceptionnelleになる傾向が読み取れました。また、フランスのニュースに注目するようになってからは、異常気象によるブドウの出来不出来が評価に反映しているらしいこともわかってきました。たとえば熱中症による死者が続出した猛暑の2004年産は生産地による差が大きいようです。2018年のヒョウによる全国的なブドウ畑の被害や2021年の水害による被害などでは生産量が落ち込むことが確実視されています。多分筆者が手にできる価格帯のワインのできも今一つだろうと予想しています。筆者は節分の恵方巻と同じ類のお祭り騒ぎが気に食わなくてボージョレ・ヌーヴォーというものを飲まないから知りませんが、2018年や2021年はどうだったのでしょう?

 ワインを楽しむうえでエチケットに詰まった情報の大切さがわかっていただけたと思います。

 次回はワインの製造法とその用語、添加物などのお話をします。