Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide- | ||||||||||||||||||||||||||||
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4. Beaujolais(ボージョレ):1937。Auvergne-Rhône-Alpes地域圏のRhône県とBourgogne-Franche-Comté地域圏のSaône-et-Loire県にまたがる広域アペラシオン。Rhône県に86、Saône-et-Loire県に11のコミューンがある。総栽培面積8,943ha。土質は北部は花崗岩質土壌、南部は石灰質粘土。 ワインの97%が軽い赤、主要品種はガメ、補助品種としてピノ・ノワールが認められているがほとんど使われない。房のままのブドウを炭酸ガスを強化したタンクで発酵させるため色は薄めで、果梗から出る苦味がある。比較的安価なので若いうちに気軽に飲むためのワインである。わずか3%の白はシャルドネ。
ボージョレの中でも北部のVauxonne川とArdières川の谷あいに固まっている38のコミューンで作られる赤はBeaujolais Villages(ボージョレ・ヴィラージュ)と呼ばれ、その中心に位置する以下の10のコミューンの赤はCrus du Beaujolais(クリュ・デュ・ボージョレ)としてエチケットに村名を記載することが許可されている。①Brouilly(ブルワリー)1938。②Chénas(シェナ)1936。③Chiroubles(シルブル)1936。④Côte de Brouilly(コート・ド・ブルワリー)1938。⑤Fleurie(フルリー)1936。⑥Juliénas(ジュリエナ)1938。⑦Morgon(モルゴン)1946。⑧Moulin à Vent(ムーラン・ア・ヴァン)1936。⑨Régnié(レニエ)1988。⑩Saint-Amour(サンタムール)1946。(年号はAOC認証年) いずれも若いうちは軽い飲み口だが、いいものは一般的なボージョレよりも熟成に向くワインである。熟成するとしっかりした味わいになるためリヨンのブションでは人気がある。
また、赤のうち一般的なボージョレよりややアルコール度数の高いワインをBeaujolais supérieur(ボージョレ・シュペリゥール)と呼び、上級畑で作られたものということになっていてエチケットへの記載も認められているが、AOPの公式な呼称ではない。さらに、ヴィラージュ、クリュ、ヌーヴォーをそれぞれ個別のAOC・AOPにカウントしている記事を見かけることがあるが、INAOの公式な認証ではすべてAOPボージョレに含まれる。 Beaujolais nouveauまたはprimeur(ボージョレ・ヌーヴォーまたはプリムール)は新酒のうちに出荷されるもので、1951年にAOCに追加された。 もともと取次業者や輸入業者がその年のワインのできを評価するために作られた試飲用のワインが始まりで一般に販売するものではなかった。現在のブームは安ワインが多いボージョレでの販売量増加戦略として「毎年11月の第3木曜日午前0時解禁の新酒祭り」に仕立て上げたものである。世界的な流行に押されて今ではフランスでも販売されるようになっているが、1本数ユーロ、ときに1ユーロ以下の安酒であることには変わりない。 Beaujolais VillagesやCrus du Beaujolaisにもヌーヴォーはあるが、本来が試飲用であるため熟成を止めた状態で出荷される。したがってすぐに飲まなければあとは劣化するだけである。 時差の関係で日本が最初の解禁地になるため、「世界で最初にボージョレ・ヌーヴォーが飲める」ということで一種のトレンドになった感があり、輸入量は年々増える一方である。日頃ワインを飲まない人たちまでが予約して求めたり、すし屋や居酒屋までが「ヌーヴォーあります」なんて張り紙を出したりしている。 このお祭り騒ぎに関しては、毎年のようにつけられる「10年に一度の偉大なワイン」とか「過去最高と言われた2005年に匹敵」とか「110年ぶりの当たり年」などといったキャッチコピーが物議をかもしている。こういったキャッチコピーはボージョレのワイン委員会の公式評価とはほとんど関係なく輸入業者や販売業者が勝手につけたものである。冷害やブドウの開花期のヒョウの被害が深刻だった2019年についても、「収量が落ち込んだためかえってバランスの良い力強いワインになった」などと言い訳じみたコピーをつけている業者もある。 恒温コンテナの航空貨物で輸入され、税金と、輸入業者、取次店、配送業者、販売店、飲食店それぞれがブームに乗って割り増しした利益を考えれば、ばかばかしいほど高くなった安酒をありがたがっているだけだということに早く気付いたほうがいいと思う。 美食の都リヨンのあちこちにある居酒屋ル・ブションで提供されるハウスワインの赤は大半がボージョレだが、しっかり熟成した深い味わいのものが選ばれている。「ヌーヴォーは売れるから作る、儲かるから仕入れる」という風潮に拍車がかかって、熟成を経てから味わうという本来の赤ワインの生産がヌーヴォーに押されるようなことになっては、食文化の中でボージョレワインの地位は低くなる一方だろうと危惧する。ワインに親しむとっかかりとしては悪くないかもしれないが、「毎年なんとなくボージョレ・ヌーヴォーだけ飲む」という人も多いはずで、本当においしいワインに出会わずじまいの人もたくさんいるだろう。ワイン文化のためにもこんなブームは早く下火になってもらいたいものだ。 |
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