Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
   
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268. Cahors(カオール)Sud-Ouest:1971。Massif central(マシフ・サントラル=中央山塊)のQuercy(ケルシー)と呼ばれる地方。ロット県の Lot川に沿った標高300mほどのカルスト台地上に広がるアペラシオン。カオールを中心として45のコミューンがある。
土質は石灰質土壌で石灰岩礫を多く含む。冬の最低気温がー15℃にもなる厳しい土地である。
赤ワインのみを作る。主要品種はオクセロワ(マルベックのカオールだけの呼び名)70% 以上。補助品種としてメルロー、タナを合わせて30%未満使用することが認められているが、上流部で作られるオクセロワ単一のワインこそお勧め。完熟したオクセロワは黒と見まがうほど濃い黒紫色で糖度も高くなる。
潰したブドウの醸しは30日以上かけて行われその間にアルコール発酵が進む。その後プレスして搾ることによりタンニンとアントシアニンが多量に抽出される。2次発酵は樫の大樽かステンレスタンクで8~10ヶ月かける。大樽で澱下げしたのち直ちに瓶詰めするものと木製の樽で熟成するものがあるが、どちらも出荷するまで3年かけることが義務付けられている。
Vin noire(ヴァン・ノワール=黒いワイン)と呼ばれるほど黒に近い濃赤紫色。3年熟成したワインは黒い果実や甘草、シナモン、アニス、カカオなどが混じった複雑で強いアロマがあるがまだ若い。瓶詰めして2~3年でもまだワインは閉じている。タンニンがこなれていないため舌触りも強い収斂性を持ち香りもすぐに逃げてしまう。8~10年程度で若いうちのアロマに森の下草、菌類の繁殖した腐葉土、トリュフのようなニュアンスが加わり、徐々にタンニンがこなれて甘味さえ感じる素晴らしい味わいになる。酸味は少ない。赤身肉全般、特にグリルした牛肉、イノシシ、シカ、カモなどの蒸し煮や赤ワイン煮などとの相性が抜群。18℃前後で供する。
カオールのワインはローマ時代から皇帝にも届けられていたと言うくらいその名が知られていたらしい。その味を求めて最近ではアンフォラを再現した壺で3年熟成させたワインを作っている生産者もいる。
カオールの町はロット川が大きく蛇行する場所に位置し、見張り塔のある石造の橋「Pont Valentré(ポン・ヴァラントレ)」やペリグー様式の「Cathédrale Saint-Etienne(サン・テティエンヌ大聖堂)」など世界文化遺産「フランスのサン・ティアゴ・デ・コンポステラ巡礼道」のうちル・ピュイの道の構成遺産がある。近くにはフランスの最も美しい村のひとつ「St-cirq-la-popie(サン・シル・ラポピー)」など見どころも多い。


ポン・ヴァラントレ サンテティエンヌ大聖堂
        
サン・シル・ラポピー     赤       アンフォラ熟成の赤
 
 牛フィレ肉とフォワグラのロッシーニ 猪肉の赤ワイン煮込み