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心臓に毛が生える
このクラスでフランス語を勉強して、5年目になります。初めは大学の4年生でした。「心臓に毛を生やしなさい」。一回目の授業で先生がおっしゃった言葉です。ラジオのフランス語を聞き、その場ですぐ日本語に訳す練習。ぜんぜん聞き取れない。それでも、聞こえた断片をつないで、文章にしなさいと先生は言いました。
とりあえずあてずっぽうで訳を出しました。大外れでした。自分の間違いを他の受講者にも知られてしまうのが恥ずかしく、その日は落ち込んでしまいました。
それから5年。慣れというのは不思議です。間違えていても平気で訳を出せる自分がいます。拙い表現でも、フランス人と話ができます。心臓に毛が生えたのです。
授業では、自分がどう聞き間違えたのかを、冠詞や接続詞に至るまで指摘してもらえます。文章の読解でも、各自の読み取りを、一単語レベルまで、先生や他の受講者が互いに検討します。そこに容赦はありません。みんながそれぞれ伸びるため、つねに真剣勝負です。
こうして生えた心臓の毛は、フランス語に役立つだけではありません。会議でプレゼンするとき、学会で質問に答えるとき、プライベートの一大事のとき、私を後ろから押してくれるのです。
自分の研究や仕事で休んでしまうときもあります。それでも、心臓の毛が弱ってしまわないよう、これからもフランス語を学び続けていきたいと思います。
仏→日 逐次通訳と翻訳(上級)クラス受講生
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