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                    | はじめに 
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                    | 旅のはじめでいきなりつまずいた |  
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                    | 地中海世界 |  
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                    | ローマ属州 |  
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                    | ガリア・ナルボネンシスの玄関 ―マルセイユからサン・レミへ―(1~3) 
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                    | 天空の城と石の家 |  
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                    | ラヴェンダー畑に建つセナンク修道院 |  
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                    | ワイン街道をヴェゾンへ オランジュ ―ローマが息づく街―
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                    | 山上の砦 |  
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                    | ユゼスからポン・デュ・ガール |  
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                    | ガリア・ナルボネンシス最初の植民都市 |  
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                    | 聖地への道の起点 ―サン・ジル― |  
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                    | ローマ、聖地、そしてゴッホ |  
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                    | 港町マルセイユ |  
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                    | Ⅱ. 拡大するガリア・ローマ(2010) |  
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                    | Ⅲ. 三たびガリア・ローマへ(2016) |  
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                    | 旅の終わりに |  
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                    | あとがき |  | ガリア・ナルボネンシスの玄関 ―マルセイユからサン・レミへ―(2)
 
 シルヴァカーヌを後にさらに西へ、アルルとアヴィニョンの中間地点あたりまで進むとサン・レミ・ドゥ・プロヴァンスに至る。ここにロマネスクの凛とした美しさを持つ回廊で知られるサン・ポール・ドゥ・モーゾール修道院Monastery
              Saint-Paul de Mausole がある。回廊の中庭にはとりどりの花が咲き乱れ、一部に木造建築も組み合わさっていて全体的に温かみを感じさせる。かつて精神病院があったこの修道院は、ファン・ゴッホが入院していたことでも有名である。アルルでの盟友ゴーギャンとの訣別、そして芸術家理想郷建設の夢破れた果てに自ら望んだ入院だった。1年あまりの入院中錯乱と小康を繰り返しながらもこの間150点以上の作品を描いている。今現地に立つと、アルピーユ山や糸杉のある風景などよく目にする絵を描いた場所があちこちに残っていて、ゴッホが画架を立てたであろう場所には作品の写真付きの説明板が立っているのだが、ゴッホの時代とあまり変わっていないことに驚かされる。特に、サン・ポール・ドゥ・モーゾール修道院に続く砂利道の脇に広がるオリーブ畑のそれは木の配置から枝張りまでゴッホの絵そのもので、いたく感動してしまった。
 この街には残りのよいローマの植民都市遺跡もある。旧市街の1㎞ほど南の丘陵地帯に県道を挟んで遺跡が広がっている。西側のレ・ザンティーク(Les Antiques) には上部の崩れた凱旋門と霊廟が建っている。どちらも全面に狩猟や戦闘の様子を活きいきと描いた彫刻が施されていて見事なのだが、両方とも修復工事中で足場やネットが張り巡らされ、ほとんど見えなかったのが残念だ。以前パリのサン・ジャック塔でも感じたことだが、ことフランスに関しては遺跡や歴史的建造物の修復工事の情報がなかなか掴めないのが旅行者にとっては不便なところだ。文化省や地元の博物館、市町村のホームページは必ずチェックしてから出かけるのだが、一度もそんな情報に出会ったことがない。観光産業に不利な情報は流すなという作戦なんじゃないかと勘ぐってしまうほどだ。
 
                
                  
                    
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                      | サン・ポール・ド・モーゾールのタンパン・身廊・回廊 |  |