Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
Ⅲ. 三たびガリア・ローマへ(2016)
フランスの絶景 ―サント・ヴィクトワール山―
ローヌワイン街道と美しい村々
オークルの村 ―ルシヨン―
特別な白ワイン ―ボーム・ド・ヴニーズ―
ヴァケラスからジゴンダス
セギュレとサブレ
住人が育てるいいレストラン ―カヴァイヨンー
コロニア・アレラーテ再訪 ―交易都市再発見―
古代ローマの川船
ガリア・ローマの食品コンビナート
フランス最大の塩田地帯 ―カマルグ湿原―
カマルグの白い馬
マルセイユ ―ガリア・ローマの熱気―
旅の終わりに
Ⅰ. ガリア・ローマへ(2007)
Ⅱ. 拡大するガリア・ローマ(2010)
あとがき

特別な白ワイン ―ボーム・ドゥ・ヴニーズ―

 2日目の夜はカヴァイヨンという町に泊まったのだが、そのことは後に回してワイン産地と美しい村の話を続ける。
 ボーム・ドゥ・ヴニーズBeaumes de Venise の村は、カヴァイヨンからだと2007年の旅で立ち寄ったアンティークの町リル・シュル・ラ・ソルグL’ill sur la Sorgue を通って北に30㎞ほどのところだ。ここも鷲の巣村かと思うぐらい急傾斜の石畳道が張り巡らされたきれいな村で、ところどころに泉のある小さな広場がある。
 ローヌワインといえばどっしりとしたフルボディの赤でよく知られるが、この村の名を世界中に知らしめているのはミュスカという品種から作られるミュスカ・ドゥ・ボーム・ドゥ・ヴニーズMuscat de Beaumes de Veniseという特別な白ワインだ。フランス語ではMuscat 一言でごく甘口のデザートワインも意味するが、普通の白ワインより長熟タイプが多いデザートワインの中でもここのは特に長期間命を保つことで有名だ。飲める状態かどうかはわからないが、地元の老舗ワイナリーには1898年のものが保存されているほどだ。AOC取得は1945年と古い。
ミュスカは日本でいうマスカットの一種だが、日本のもののように緑色ではなくピンクや黒ブドウに近い色のものもあり、年によってワインの色も違ってくる。かわいい泉のある広場に面したボーマルリックDomaine de Beaumalric というドメーヌの直営店で試飲しながら2本求めたが、2014年物はゴールド、2015年物は淡いピンクである。フルーツの香りが強く、ごく甘口にもかかわらず喉越しは滑らかだ。ヴィンテージによる味の違いはほとんど感じなかった。
こういうワインは今すぐ飲んでもおいしいし長期間寝かせておいてもいいということでまだ飲まずに置いてある。どんな時に抜栓するか悩ましいところだが、フォワグラや柔らかいタイプのチーズ、チョコレート、それにメロンのようなフルーツにも合わせられるということなのでメニューをどう組み立て何を合わせるか考えるのも楽しみである。
 ちなみに重厚な赤ワインもボーム・ドゥ・ヴニーズとしてAOCを取得しているが、2005年取得とミュスカよりずっと後になってからである。
 この村には、水車を使ってオリーブの実をつぶすという伝統的な製法で作られたオリーブオイルを売っている店もあった。

 

小さな広場に面したワインショップ

テイスティングルーム  

ミュスカ 

水車で絞ったオリーブオイルの店