Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
Ⅲ. 三たびガリア・ローマへ(2016)
フランスの絶景 ―サント・ヴィクトワール山―
ローヌワイン街道と美しい村々
オークルの村 ―ルシヨン―
特別な白ワイン ―ボーム・ド・ヴニーズ―
ヴァケラスからジゴンダス
セギュレとサブレ
住人が育てるいいレストラン ―カヴァイヨンー
コロニア・アレラーテ再訪 ―交易都市再発見―
古代ローマの川船
ガリア・ローマの食品コンビナート
フランス最大の塩田地帯 ―カマルグ湿原―
カマルグの白い馬
マルセイユ ―ガリア・ローマの熱気―
旅の終わりに
Ⅰ. ガリア・ローマへ(2007)
Ⅱ. 拡大するガリア・ローマ(2010)
あとがき

 マルセイユ ―ガリア・ローマの熱気―

 カマルグ馬の乗馬はこの旅一番の楽しい経験になった。大満足で帰路につき、翌朝の帰国便のためにマルセイユの空港でレンタカーを返却して初日に泊まったのと同じホテルで荷を解いた。
 夕方早い時間帯に着いたので、夕食は最初のプロヴァンス旅の時気に入った旧港近くの「エカイエ(カキ打ち屋)」にまた行こうということになり、マルセイユ・サン・シャルル駅行きの空港バスで出かけた。今回は身軽なので例の大階段を下って歩いて旧港に向かう。大階段の上からは旧港からノートルダム・ドゥ・ラ・ギャルドの「良いお母さん」まで見渡せる。
ずっと続く下り坂をぶらぶら歩いて旧港まで出るとすごい人出だ。エカイエも混みあっていたが、タイミングよくテラス席が空いた。前菜にスープ・ドゥ・ポワソンとパナシェ・ドゥ・コキヤージュをとって、旅の無事を祝ってつれあいとカシの白ワインで乾杯した。メインは大ぶりなエビのプロヴァンス風焼き物と、エビ、ムール、イカなど魚介の平打ちパスタにした。どれもうまくて平らげてしまったが、一皿の量が多いのでやっぱりデザートは食べられなかった。
 満腹で駅までの坂道を登るのはつらいなあと思っていたらつれあいも同じだったらしく、ちょっと遠いけど旧港近くからホテルまでタクシーで帰ろうということになった。車の中でつれあいと運転手が話していた内容をあとで聞くと、「最近シリアからの大量の難民の流入がヨーロッパで大きな問題になっているけど、マルセイユの人たちはどう感じているんだろう」と聞いてみたところ、「みんなあんまり深刻にはとらえていないみたいだよ。おれも元移民だし、だれでも受け入れるのがマルセイユ人なのさ」という答えだったそうだ。ついでに、「難民の中には悪い奴もいるが、フランス人にも同じくらい悪い奴はいるさ」とも言っていたらしい。
古代ギリシャのマッサリアの時代から地中海の交易港として栄えたマルセイユにはそれ以来様々な国から人の出入りがあり、今町を歩いていてもイタリア、トルコ、アラブ、エジプト、マグレブ、アフリカのほか、ベトナム、中国、東欧などにルーツを持つような人たちが行き交っている。確かにフランスの中では犯罪発生率が高い町だともいわれるが、「だれでも受け入れる」というスタイルがこの町のエネルギーになっているようにも思えた。
それは、ローマ人とガリア人ばかりでなく、各地の属州から来た人々が行き交っていたであろうガリア・ローマの熱気に触れたような感覚にさせるものだった。

 
マルセイユ駅の大階段 大階段の上から見た景色

パナシェ・ド・コキヤージュ

スープ・ドゥ・ポワソン
   
 魚介の平打ちパスタ ガンバのプロヴァンス風