Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
①薔薇色の町 ②サン・セルナン広場の蚤の市  ③サン・セルナンバシリカ ④ジャコバン修道院Les Jacobins
④サン・テティエンヌ大聖堂Cathedrale St-Etienne ⑤オーギュスタン博物館Musée des Augustins
⑥ミディ運河
 ⑦ポン・ヌフを見たら海鮮だ ⑧マルシェ ―土曜日の市場は男の社交場―
目 次
はじめに
トゥルーズToulouse

カルカッソンヌCarcassonne

ロカマドゥールRocamadourと
ロスピタレL’Hospitalet
スーイヤックSouillac・
レゼジー村Les Eyzies
再びトゥルーズ
あとがき―パリにて―
附:この旅で訪れた世界遺産
オーギュスタン博物館  Musée des Augustins
       ―ロマネスク彫刻の宝庫―

 サン・オーギュスタン(聖アウグスティヌス)修道院というのがこの博物館の前身である。広い中庭を柱廊が囲む14世紀の建築はそれだけでも文化財的価値があろうが、この博物館の最大の価値は、かつて建築の一部だったロマネスク彫刻を多数保存しているところにある。フランス革命とその後に続く時代は、多くの歴史的建造物を破壊してきた。富裕な市民層が贅沢な石造の邸宅を競うようになり、古いものへの価値観が薄れた世相とあいまって歴史的建造物から手っ取り早く石材を調達したからだ。サン・セルナン・バジリカですらその例外ではなく、ひどく傷つけられ、石材が持ち去られたという。そして石材としては無価値な彫刻類は打ち捨てられたのである。
町のそこここにそんなふうに放置された柱頭彫刻やガーゴイルなどを丹念に集めたのがこの博物館だ。柱頭彫刻の部屋には膨大な数の柱頭飾りがこれでもかといわんばかりに並んでいて壮観というしかない。中に数は少ないながら壁面やファサードを飾っていた彫刻もある。ロマネスク彫刻は、ルネッサンス期のものなどとは比すべきもない古拙と言っていいものだが、摩訶不思議な雰囲気が漂っている。中でも交脚菩薩像を思わせる2体のレリーフが最も印象に残った。
柱廊の一辺にはガーゴイルがずらりと並んでいる。怪獣や悪魔を表現したそれらは、建物の外壁から突き出していてこそ不気味なのだと思う。立てられて上を向いて口を開けている姿は、餌をねだる雛のようで妙に可愛らしく、なんとなく間が抜けていて悲しい。
ほかにも、修道院時代の礼拝堂は原形を保っているし、数多くの石棺の蓋や、かつてのトゥルーズの栄光を物語るレンガによる彫塑などが置かれていて見飽きることがない。