Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
①薔薇色の町 ②サン・セルナン広場の蚤の市  ③サン・セルナンバシリカ ④ジャコバン修道院Les Jacobins
④サン・テティエンヌ大聖堂Cathedrale St-Etienne ⑤オーギュスタン博物館Musée des Augustin
⑥ミディ運河
 ⑦ポン・ヌフを見たら海鮮だ ⑧マルシェ ―土曜日の市場は男の社交場―
はじめに
トゥルーズToulouse

カルカッソンヌCarcassonne

ロカマドゥールRocamadourと
ロスピタレL’Hospitalet
スーイヤックSouillac
クロマニョン人の故地
あとがき―パリにて―
附:この旅で訪れた世界遺産
 ポン・ヌフを見たら海鮮だ


 ポン・ヌフPont Neufは旧市街の西を流れるガロンヌ川に架かる石造の橋で、「新橋」という名だが、トゥルーズでもっとも古い橋で、メス大通りが市外に通じる重要な交通路に当たり、サン・ティアゴ・デ・コンポステラの巡礼路を構成する世界遺産でもある。川沿いの道は高い石積みの護岸上にあって、夜にはライトアップされたポン・ヌフの美しい遠景が望める。護岸の下の河岸には「アンリ・マルタンの散歩道Promenade Henri Martin」と名付けられた遊歩道が整備されていて、ベンチが置いてあり、川面には鴨が遊んでいて風情がある。その磨り減り具合が長い水運の歴史を感じさせる船を舫うための太い鉄製の輪が護岸の石積みに埋め込まれている。
橋と道路の取り付きは頑丈そうな穹窿を伴うアーチ構造で、美しい石積みが頼もしい。どっしりとした橋脚に特徴的なのは、それぞれにりんごを縦割りにしたような断面形のトンネルが開けられていることである。優に人の背丈の倍ほどはあろうというトンネルは、長さや形の違う石材を巧みに組み合わせて構築されている。増水時に橋脚に当たる水の勢いを弱めるための工夫だろうか。

 ポン・ヌフの近くにボー・ザールBeaus Artというブラッスリーがある。シーフードが売り物で、店の外の台にあふれんばかりの魚介類を並べて客を引きつけている。ブラッスリーというが、店内は結構高級感のあるレストランで、黒服の気さくなウエイターたちがきびきびと動いているのが気持ちいい。
この店で人気のシーフードの盛り合わせプラトー・ド・フリュイ・ド・メールを注文した。出てきたのは直径60㎝はあろうかという銀の大皿に盛ったクラッシュアイスの上に、蟹、オマール、エクルヴィス、大小2種類の牡蠣、ハマグリ、ニナの類の巻貝などが山盛りで、思わず「おおーっ」と歓声を上げてしまったほどだ。牡蠣は当然一人1ダースずつ乗っかっている。食いきれるだろうかと心配になるようなボリュームだったが、キリリと冷えた土地の白ワインが旨くて、きれいに平らげてしまった。海老・蟹に関しては日本人のお約束で、頭の中のみそまでしゃぶりつくしたが、周りにいた土地っ子らしいフランス人のグループもみんな手づかみでぴちゃぴちゃ、ちゅうちゅうやっていたから、テーブルマナーには反していなかったのだろう。ちなみに隣のテーブルのお洒落な中年のカップルは、気取ってナイフフォークを操っていたが、あんたら美味しいとこ食べそこねてるよ。
貝類は海水からあげて剥いただけのもので、レモンを絞ってすすり込む。真水で洗っていないので、レモン汁で海水の塩味を洗い流して食べる感じだ。牡蠣は殻の小さいほうが身は小ぶりだが味が濃かった気がする。アサリのような模様で殻の内側が鈍いオレンジ色のハマグリもコリコリとした食感で旨い。蟹と海老は塩茹でしただけのもので、マヨネーズが添えられているがそのままでも十分旨い。念のためマヨネーズだけなめてみたら、自家製らしく新鮮ないい味だった。
この盛り合わせ、実は前菜らしく、地元のグループはこのあとポワレだの、ムニエルだの、ブイヤベースだのと食べまくっていたが、悲しいかなわれわれの胃袋は前菜の容量しかなかった。本当に奴らはどんな胃袋を持っているのだろう。