|
ジャコバン修道院 Les Jacobins
それは、狭い通りの向こうに忽然と姿を現した。石とレンガで構築された八角形の塔は、サン・セルナン・バジリカの塔が本来どういう姿だったかわからせてくれる。近づいてみると、サン・セルナンよりもレンガが多用されていることがわかる。礼拝堂の内部はかなり暗いが、それだけにステンドグラスの美しさが際立っている。目が慣れても見えにくいが、保存状態のいい天井画も大変美しいものだ。
暗い堂内から柱廊に囲まれた中庭に出ると、季節の花に彩られた別世界が広がる。柱廊の柱は華奢だが、一本一本異なる柱頭彫刻が施されていて、じっくり見て回るには時間が足りない。
柱廊の一角からたまたま修道院の裏手へ出てみると、人々を迎え入れる正面とはうって変わって、装飾のない窓や小さな入り口のある垂直な高い煉瓦の壁が立ちはだかっており、壁から突き出た様々な顔のガーゴイルが下界を睥睨していて、人を寄せ付けない威圧感がある。
サン・テティエンヌ大聖堂
メス大通りRue de Metzから一筋南に入ると、狭い通りが突然開けて、明るいサン・テティエンヌ広場(Place de St-Etienne)
に出る。聖堂は噴水のある広場に面して淡い赤色煉瓦の瀟洒な姿でたたずんでいる。11世紀に建築が始まり、13世紀末に完成したというこの教会は、その後16世紀と19世紀にも修築が行われたため、一つの建築にロマネスクとゴシックが混在し、外壁の彫刻はルネッサンス、塔の頂上にある鐘楼は、装飾煉瓦建築の粋とも言うべきものが取り付いている。こう書くとなにやら混沌とした建物のようだが、外見は意外とシンプルである。ファサードの周りだけに白い石灰岩が組み合わされ、大きな薔薇窓を持っているが、タンパンの装飾はゴシックにしては簡素である。
大きな窓が多いため結構明るい聖堂内部も、ステンドグラス以外はあっさりとしたモノトーンでかえって落ち着きがある。ただ、細部に目をやると、祭壇脇の木のベンチに施された凝った人面の彫刻や扉の装飾など、13世紀の木彫類に面白い造形が多く見られる。
度肝を抜かれたのは身廊の壁面に取り付けられた巨大なパイプオルガンだ。演奏するためにはどんな送風装置が必要なんだろうと思うぐらいでかい。腹の底に響くに違いないその演奏を一度聴いてみたいものだ。トゥルーズの各教会には名器といわれるパイプオルガンが残されているらしく、夏にはパイプオルガンフェスティバルが催されるという。
|