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ブルターニュ公国の古都
モルビアン考古学博物館 Musée archeologique Morbihan
柔らかな起伏を持った旧市街の石畳の通りには木骨造の家々が建ち並び、商店やレストランとして活用されている。そんなレストランの一軒の壁に「ヴァンヌとその妻Vannes
et sa femme」と名づけられたユーモラスな彫刻が取り付いている。
旧市街の裏通りにも入ってぶらついてみたのだが、都市化が進んでいて古都の風情はあまり残っていないように感じたのは期待はずれだった。
「ヴァンヌとその妻」の真向かいがモルビアン考古学博物館だ。この博物館は15世紀に建てられたガイヤール城の内部を改装したもので、ブルターニュの旧石器からガリア・ローマの時代の遺物が所狭しと並べられている。特に新石器時代から鉄器時代の展示が充実していて、多くの土器を実際に見ることができたのは収穫だった。
ただ、こういった博物館の展示でも土器型式については3000年の間に5型式しかはまっていないような荒っぽいものだし、ドルメンなども型式分類はあるようだが、古い研究成果をそのまま援用していて相対的な編年観がよくわからない。相対的な年代のものさしとして土器形式を細分化することの有効性は日本の考古学が世界に示している。そこに放射性炭素14などを使った物理的年代測定の値を当てはめてみるから、考古学的手法と自然科学的手法のクロスチェックができるのだと思う。ブルターニュ地域の考古学的調査は最近でも行われているはずなのだが、展示からは最新の成果が読み取れない。緻密さを欠いた土器分類にいきなり物理的年代測定の値を与えられてもにわかに信用できないと感じてしまうのである。旧石器の研究に関しては世界一といっていいほど進んでいるフランス考古学だが、新石器時代の研究はまだまだこれからという感じを受けた。
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