Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
異境ブルターニュ ブルトンの歴史 ブルトンの紋章 ブルトン語 ブルトンの宗教
はじめに
やっぱりフランス旅は
いきなり面白い
ブルトン
またはケルトの国
メガリス Megalithes
ブルターニュ公国の古都
小さな海 
―mor bihan―
メガリス研究発祥の地
地の果て Finistère
ブルトンの村・建築
ブルターニュの最深部
―フィニステール北岸―
谷の町モルレー Morlaix
パリに戻ってさらに考えてみた
ブルトンまたはケルトの国

異境ブルターニュ

 ブルターニュは大西洋に突き出た半島で、フランスの西の端だ。コート・ダルモールCôtes-d’Armor 、イル・エ・ヴィレーヌIlle-et Vilaine 、フィニステールFinistère 、モルビアンMorbihan の4県で地域圏を構成しており、バス・ノルマンディーBasse-Normandie とペイ・ド・ラ・ロワールPays de la Loire の各地域に囲まれている。いくつかのガイドブックにはフランスの秘境などとも書いてある。まさかそんなこともないだろうが、メガリス(巨石文化)の遺跡がそんなイメージを醸成しているのかもしれない。

高校の教科書でも、世界史の概説書でも必ず登場するヨーロッパ新石器時代の巨石文化。そこにはイギリスのストーン・ヘンジとともに必ずブルターニュの列石やメンヒルの写真が掲載されているだろう。子供のころ「世界グラフ」だったかな?大判の写真誌が家にあって、メガリスが紹介されていた。確かケルト人が生贄を捧げてまじないをした場所だというようなことが書いてあった記憶がある。ケルト人が恐ろしく野蛮な連中のように描かれていて今思えば笑い話のような大嘘だが、ものすごく空想をかき立てられ、いつか必ず訪ねたいと思ったものだ。後年シュワルツェネッガー主演のコナン・ザ・グレート(原題はコナン・ザ・バーバリアンだったと思う)という映画を見たとき、既視感というのかな?子供のころ頭の中を駆け巡っていた空想と重なる部分があって妙に可笑しかった。今でもマコ・イワマツの演じたまじない師と狡猾なドルイド僧のイメージが重なって見える。

 人類の歴史の上で、新石器時代はきわめて重要な時代である。その時代のムーヴメントは新石器生産革命といってもいい。農耕と牧畜の開始によって人口は爆発的に増加したし、大きな木を伐採・運搬する技術、石による建造物の建設技術、船の発明など数例を挙げただけでも、世界各地での文明の発生につながっていくような、物質的、精神的に人類が大きく成長した時代だということがわかる。
 しかるに、西部ユーラシア新石器文化の花形といっていいブルターニュの巨石建造物群が、なぜ世界遺産に登録されていないのだろうか?フランス政府はなぜ暫定リストにも挙げていないんだ?という素朴な疑問をずっと持ち続けてきた。ユネスコの関係者か文化庁の担当官に尋ねればすぐわかることかもしれないが、まずは自分の目で感じたことをもとに考えてみたいと思ったのがこの旅のきっかけだ。

また、ブルターニュはケルト神話や伝説の宝庫でもあるらしい。少年時代に心ときめかせて読んだアーサー王伝説の原型に近いものが残されている土地だと言う。その裏にはフランスで一般的なローマ・カトリックとは違うキリスト教の歴史も見え隠れしている。映画化されたハリー・ポッターや指輪物語に夢中になっているのはいまや少女だけではないらしい。そんなファンタジーのふるさととも言える場所のようだ。魔法使いみたいなばあさんに会えるかも知れん。

さらにいろいろ調べてみると、意外なことに地のワインがなくビールが有名であるあたりなんだかフランスらしくない。さかんに栽培されているりんごを使った発泡酒シードルも名高い。そんなビールやシードルはそれこそ町ごとといっていいくらい銘柄があるらしく、それがまためっぽう旨いというじゃないか。もちろん魚介類は豊富だし、潮風を受けた牧草を食んで育った羊も旨いらしい。また、蕎麦の栽培もしているらしく、蕎麦粉を使ったクレープもさかんに食されている。食いしん坊としての期待もふくらむ一方だ。
なんだかちょっと懐かしいような、暮らしやすそうな処じゃないか。