Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
異境ブルターニュ ブルトンの歴史 ブルトンの紋章 ブルトン語 ブルトンの宗教
はじめに
やっぱりフランス旅は
いきなり面白い
ブルトン
またはケルトの国
メガリス Megalithes
ブルターニュ公国の古都
小さな海 
―mor bihan―
メガリス研究発祥の地
地の果て Finistère
ブルトンの村・建築
ブルターニュの最深部
―フィニステール北岸―
谷の町モルレー Morlaix
パリに戻ってさらに考えてみた
ブルトンまたはケルトの国

ブルトンの紋章


 ブルターニュの町や村のいたるところでブルトンの旗を見かける。役所や観光案内所など公的な場所でも三色旗より多いぐらいだ。一見星条旗のように見えるその旗は、白地に5本の黒い横帯を配し、左上の空白に11個のアーミン文様をあしらったものである。この旗、ブルターニュ公国のものかと思っていたのだが実はそうではない。20世紀になってから作られたものだという。14世紀にブルターニュ公ジャン3世が定めた旗は白地に一面黒いアーミン文様を散らしたものである。
 古来ブルトンの紋章には白テンが描かれるのだが、これがアーミン文様のルーツだ。エルミンhermine は白テンのことで、十字軍に従軍したブルターニュの騎士がまとった白テンの毛皮のマントの黒い斑紋をデザイン化したものがアーミン文様となった。ちなみに、hermine の語源はアルメニアからもたらされた貴重な毛皮だったことによる。“アルメニアの毛皮”がそのまま生きている動物そのものの名になるなんて、なんか変な感じだね。
 白地に黒の横帯のほうにもルーツがある。ブルターニュの旗は今でもGwenn ha Du (白と黒)と呼ばれるのだが、この白と黒も12世紀までさかのぼるものだ。1188年の第3回十字軍のとき、各国の軍団に十字の旗が割り振られた。フランスは赤、イングランドは赤地に白、フランドルは黄、マルセイユは青というふうで、ブルターニュに割り当てられたのがKroaz Du (黒十字)と呼ばれる白地に黒十字の旗だった。12世紀のレンヌの旗がアーミン文様に白黒の縦帯を組み合わせたものだったことから、ジャン3世のエルミン旗制定までブルトンの紋章としてこの組み合わせがよく使われた。

 ルイ12世とアンヌ・ド・ブルターニュの紋章にはフランス王家の百合の紋章とアーミンの紋章がひとつの王冠の下に描かれており、ルイ12世のイニシァルの下にはフランス王のシンボル火蜥蜴、アンヌのイニシァルの下にはブルターニュ公のシンボル白テンが添えられているが、白黒の帯は描かれていない。
ブルターニュ併合後もこんなふうにブルトンの紋章は公認されていたのだが、白と黒は復活しなかった。それを復活させたのが20世紀になってのことなのだが、なんであんな星条旗もどきのデザインにしたのかね。個人的には好きじゃないな。