Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-
異境ブルターニュ ブルトンの歴史 ブルトンの紋章  ブルトン語 ブルトンの宗教
はじめに
やっぱりフランス旅は
いきなり面白い
ブルトン
またはケルトの国
メガリス Megalithes
ブルターニュ公国の古都
小さな海 
―mor bihan―
メガリス研究発祥の地
地の果て Finistère
ブルトンの村・建築
ブルターニュの最深部
―フィニステール北岸―
谷の町モルレー Morlaix
パリに戻ってさらに考えてみた
ブルトンまたはケルトの国

ブルトン語

 この地域では今もなおブルトン語が通用する。話者が70万人にも達するというから、その度合いはオック語の比ではない。さすがに日常使用されるのはフランス語であるが、いたるところでブルトン語に出会う。ミシュランの地図と首っ引きで走っていて、道路の案内標識を読み取ろうとすると、何段も書いてあるためなかなか読み取れない。よくよく見ると、同じ地名を上段はフランス語表記、下段はブルトン語表記で書いてあって、ブルトン語の綴りはフランス語とまったく違うため素直に発音すらできない。4か所ぐらいの地名案内だと8段表記になっているから読み取りにくいわけだ。これは遺跡の案内板や町の観光案内標識でも同じで、自らの言語を大切にする心というか、地域ナショナリズムというか、ブルトン人のこだわりはすごいもんだ。

 ブルトン語はケルト系諸語のひとつで、ゲルマン系アングロ・サクソンに追われてブリテン島からこの地に逃げ込んだケルト人の言葉が起源になっているため、言語学上は島嶼ケルト語というらしい。イギリスに残るウェールズ語やコーンウォル語、アイルランドのゲール語なども同じ仲間だ。今も残るブルトン語にはラテン語起源の単語も混在しているが、大陸系ケルト語であるゴール語がほとんど残っていないのは歴史的背景によるものだ。国語教育におけるフランス政府の中央集権的な方針によりフランス方言とは公認されていないが、文学やケルト音楽などを媒介とした復権運動も盛んで、学校教育の場でもブルトン語が復活しつつある。

そういったこだわりを別にしても、地名にはブルトン語がそれこそかぞえきれないほど残っている。地図を見ると頭にKerのつく地名がやたらと目に付くが、kerは「小集落」または「大きな家」の意味で、そのまま村や町という意味にもなる。だから、地名で「Ker何々」とあれば「何々村」だろうし、郷土色を前面に打ち出したオーベルジュなどで「Ker何々」であれば「だれそれの大きな家」というような意味になるのだろう。今回の旅でもそんな農家民宿のひとつに泊まってみた。
われわれにはあまり馴染みのないブルトン語だが、日本でもよく知られている言葉がある。数年前に若い女性の間で人気になったフランス菓子、クイニー・アマン(より正しくはクイーニュ・アマンかな?)はバター菓子を意味するkouigu(菓子) amann(バター)というブルターニュ伝統の菓子である。