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オークルの村 ―ルシヨン―
エクスから北に向かうとルシヨンRoussillon という村があり、フランスの最も美しい村に登録されている。この村は石灰岩地帯に見られるテラ・ロッサという色とりどりの土から精製したオークルocre という顔料を生産していたところで、オークルで赤く塗られた家がひしめく可愛い村とテラ・ロッサの採掘場跡をセットで見学できる。採掘場跡は赤から黄色へと層をなして微妙に変化するテラ・ロッサの露頭がプロヴァンスの強い陽光に照らされて壮観だ。天気は良かったが風の強い日で細かな土埃が舞い上がり、鼻くそが赤くなったのには閉口した。入口の看板に「犬を連れて入ってはならない」と書いてある。柔らかい崖をひっかいて傷つけてはいけないということなのだが、犬はイニシャルやハートマークを彫り込んだりしないだろ。
1本の木の前に人だかりができていて何ごとかと見に行ったら、みんながセミがいると興奮している。透明な羽をもったヒグラシぐらいのセミだ。セミはプロヴァンスでは夏の訪れを告げる縁起のいい虫ということで人気があり、セミをモチーフにしたアクセサリーやラベンダーを詰めた匂い袋などをあちこちの土産物屋で見かける。
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ルシヨンの村 |
オークルで赤く塗られた建物 |
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オークルの採掘場跡 |
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プロヴァンスのセミ |
オークル精製所 |
ここでは今もオークルの精製を行っている。オークルはラスコーなど旧石器時代の洞窟壁画にも使われた人類最古の顔料のひとつである。村の土産物屋でオークルを練りこんだ陶器が売られていたので、趣味の陶芸用に粉末の顔料を何種類か仕入れて帰った。
ルシヨンに向かう途中でボニューBonnieux という村の近くを通過した。ここも鷲の巣村の一つで、フランスの最も美しい村には登録されていないが、道路から遠望すると崩れかけた城壁に囲まれた古くからある村だとわかる。この村のことは全くノーマークで知らなかったのだが、帰国してから調べてみると、ネアンデルタール人の文化であるムスティエ期のコンベット橋岩陰Abri du Pont de la Combette という遺跡があることを知った。
村の外にあった農家直営の蜂蜜屋に寄ってアカシアの蜜などを買ったが、素朴でとても優しそうなマダムだった。蜂蜜ももちろんうまかった。ワインも生産していてAOPヴァントゥーのロゼワインも有名らしい。惜しいことをしたものだ。
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ボニューの村 |
村の蜂蜜屋 |
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