Ecole de français du Kansai -Traduction, Interprétariat, Guide-

フランスチーズを楽しみましょう  L‘agrément des Fromages de France

はじめに
AOC、AOPとIGP
チーズの種類とタイプ
★原料乳による分け方
生地pâte の種類

⑴ ハードタイプのチーズ
⑵ 柔らかいチーズ
⑶ ブルーチーズ
   ーPâte persillée―
⑷ 乳清チーズ
Fromage de Lactosérum
⑸ フレッシュなチーズ
   ーPâte fraicheー
⑹その他のチーズ
生産者による分類
製造工程の一例
フランスのチーズA~
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AOC、AOPとIGP
 
輸入されたフランスチーズはけっして安いものとは言えませんから、食べるからにはいいものを選びたいですね。まずは「品質」の話です。
 フランス語でlabel は品質保証票のことを指します。フランスは国家戦略としてラベルをきわめて重要なものと考えており、早い段階から国が品質を保証するという法整備を進めてきました。結果として国内の産業を保護することにつながっていますが、その根本は「本物」に対して国がお墨付きを与えることで最高のブランドを守っていこうというものです。
 AOCはAppellation d'origine controlée の略で「原産地呼称統制」と訳されます。農務省が法律に基づいて定めるラベルで、1935年に創設された原産地呼称委員会Institut National des Appellations d'Origine =INAOという機関が審査し、オリジナルの名称を名乗るには非常に厳しい基準が課せられます。現在認証を受けたものの大半をワインとチーズが占めており、野菜、食肉、水産物も少しあります。面白いところでは家畜の飼料である乾草が1件あります。
厳しい基準と言いましたが、たとえば世の中にはあまたのブルーチーズがありますが、ロックフォールを名乗ることができるのはラングドック=ルシヨン・ミディ=ピレネー地域圏Ranguedoc=Roussillon Midi=Pyrénée のアヴェロン県Aveyron ロックフォール・シュル・スルゾン村Roquefort=sur=Soulzon で伝統的な製法で作られたものだけで、コピー商品はどんなに品質が良くてもロックフォールを名乗ることはできません。これは1925年の判決で確定したことで、最も古いAOCとされています。
フランスでは現在46(分け方によっては50)のチーズがAOPの認証を取得しています。
認証基準は各アペラシオンによってさまざまですが、産地とされる地域の範囲、原乳を得る動物の種類と飼育場所、与える飼料、製造する時期、製造施設の設備、搾乳方法、原乳を殺菌するかしないか(無殺菌乳の使用が義務付けられている場合、施設に加温設備があるというだけで認証されません)、温めるか温めないか、凝乳酵素を混ぜるまでの時間、凝乳の切り方や乳清との分離方法、型への詰め方、生地を加熱するかしないか、圧するか圧しないか、熟成方法と期間、出荷方法、販売方法(切り分けてパック詰めにする場合、表皮をはがすとAOPの表示は許されません)、等々、厳密に定められた基準書は1件当たり数10ページにも及びます。中には放牧地の標高まで規定されているものもあります。
 AOCは国のブランド戦略として優れた効果を発揮してきたので、EU各国でも同様の制度を創設するところが増えてきたため、現在はEU共通のラベルとしてAOP(Appellation d'origine protégée =原産地呼称保護)が運用されており、フランスでの表示もAOPに統一されていますが、AOCのときより基準が甘くなったという話も聞きます。
 AOCもAOPもチーズやワインのうち最高品質のものに国が保証を与えるもので、認証後も定期的にINAOによる審査が行われ、基準を満たさないものは認証を取り消されます。例をあげると、最も生産量が多いコンテComté というチーズは毎年5%程度の生産者が認証を取り消されるそうです。
 IGPというのは Indication géographique protégée の略で「地理的表示保護」と訳されます。その品物が生産された「土地」に限定した品質保証で、日本でいえばいい地酒とか地域の伝統野菜といった高品質の「地のもの」と考えればいいでしょう。AOC、AOPに次ぐ品質とされますが、あながち品質が劣るとは言い切れません。AOPの産地であえてAOPの基準を外して新たな味を生み出そうという意欲的な生産者がすごくいいものを作ってIGPの認証を受けている例が多いからです。
 店でチーズを選ぶとき、AOP、あるいはIGPの表示があればまず間違いがないということですが、フランスに行くとAOPでもIGPでもないチーズもそれこそ山のようにあり、中には驚くほどおいしいものもたくさんあります。そういうものに出会ったときはなにか新しい発見をした気持ちになってとてもうれしいものです。マルシェなどでは指さして「Je peux ? 」だけで試食させてもらえますからこれも街歩きの楽しみの一つです。
日本でもチーズ専門店やチーズに力を入れている百貨店の売り場などにはチーズソムリエと呼ばれる人がいたりしていろいろ相談に乗ってもらえます。ただし、店によって保管環境や販売時期、取り扱う人の知識などには差があって当然ですから、最後は自分の舌を鍛えて店選びをすることが大事ですね。

     AOPのロゴ          IGPのロゴ