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地の果て Finistère
氷河地形ゴワイエン Goyen
フィニステールでの最初の宿は、周辺のメガリス巡りやラ岬へのアクセスなどを考えてオーディエルヌ(Audierne) という町のオテル・ル・ゴワイエン(Hôtel le goyen)にした。この旅で唯一泊まった三ツ星ホテルだ。ゴワイエンは内陸に深く入り込んだ川のように見える入り江で、両岸に長い護岸が整備された波静かな良港である。ホテルは入り江の奥まったところ、漁港に面して立っている。このあたりは結構高級なリゾートらしく、ホテルから見た対岸の斜面には白壁の別荘が建ち並んでいる。魚介料理を売りにしたオーベルジュも何軒かあるのだがどこも高級で中にはミシュランの格付けを持っているところもあり、貧乏旅行ではとてもじゃないが手が出ない。この三ツ星ホテルが一番安いぐらいだ。
入り江の中ほどを高い道路橋が横断しており、その奥も深いU字形の谷になっているものの、流れ込んでいる川の水量はほんのわずかである。これは氷河が形成したカールが、氷期が終わり海面の上昇とともに入り江になったもので、フィヨルドの小規模なものと考えればいい。内陸に山があり、陸から急に海に落ち込む地形が多いフィニステールではこんな入江があちこちで見られる。ゴワイエンなどは小規模なほうだ。
で、ホテルの夕食だが、三ツ星だけあってレストランの雰囲気はとても良くスタッフの動きも洗練されていた。ところが食べたものの印象がまるで薄い。当日のメモによると、前菜はサーモンのムースにパリパリの燻製にした白身魚のスライスを載せたものとホタテのバター焼エストラゴン風味の盛り合わせ。主菜はマダラのポワレと牛肉のステーキに濃い赤ワインソースをかけたものをチョイスし、デザートはカシスのアイスクリームとものすごく甘い小さなケーキをいくつか盛り合わせたものとあり、典型的なヌーベルキュイジーヌでさすがに旨かったが、デザートは食いきれなかったと書いてある。そのときは旨かったんだろうが、今あまり思い出せないのは郷土料理を食べたときのような感動がなかったからだろうな。日本のお洒落なフランス料理屋でも食べられるようなものだったんだ。
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