|
泉の都エクス
アルバ・ラ・ロメーヌからはちょっと遠いが、リヨンに戻る途中で寄りたいところもあったので、前回飛行機の遅れですっ飛んでしまったエクサン・プロヴァンスAix-en-Provence に向かった。英国の作家ピ-ター・メイルPeter Mayle が著した「南仏プロヴァンスの12か月」で一躍有名になったこの町は、陽光あふれるプロヴァンスの中心、街じゅういたるところに泉がわく美しい町というイメージが定着しているだろう。もちろん我々もそういう期待は持っていた。
ところがだ、確かに町のあちこちに泉があり、きれいな噴水がしつらえられたりしているのだが、どこへいっても観光客であふれかえっている。ローヌ渓谷の田舎町をあちこち訪ねた後だったため、喧噪の大都会、ただの大観光地やんけ、というのが第一印象だった。作られたイメージというのは恐ろしいもので、そのイメージに惹かれて世界中から観光客が集まり、かえって町の雰囲気を損ねてしまったいい例だろう。ただ、えらいもので、町のあちこちにある泉の水はEau portabre という表示があって今でも飲めるところが多い。大都市の中にあってこれはたいしたものだ。
エクスは南フランスから南西フランスがアラブによる侵略を受けた時にアラブ寄りの立場をとったため、シャルル大帝の軍によって徹底的に破壊されたそうだ。そのため、中世以前の面影があまり残っていない。ガロ・ローマの植民都市もあったのだが、今その痕跡は大聖堂の地下や街角の片隅にわずかに残っているだけである。イメージの落差になんだかがっかりしてしまって、エクスではそれほど多くを見に行ったわけではない。
まず、オフィス・ドゥ・トゥーリズムで入手した観光マップに従っていくつかのローマ遺跡を見に行った。町の中心にあるサン・ソヴール大聖堂Cathédral Saint-Sauveur はローマ神殿の跡に建てられたもので、正面外観はゴシック建築だが、12世紀創建なので、回廊や塔にはロマネスクが残っている。内部にはローマ神殿の柱や柱頭彫刻が結構あるし、床の一部が1.5mほど下がったところにはローマ時代の石積み井戸の遺構がある。今は水は湧いていないが、かつては洗礼に用いる水をここから得ていたのだという。
大聖堂の周辺を散策すると、建物の地下に下りていく小さな広場にローマ時代の石積み遺構などが残っている。中世の建物の基礎部分として使われていたのだろうが、シャルル大帝の破壊の跡か、火災で黒く変色した部分も見られた。
|