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聖アマドゥール
ノートル・ダム礼拝堂とサン・ミッシェル礼拝堂の間の岩壁に聖アマドゥールの墓所と伝える小さな岩穴がある。ここがRoc-Amadour(聖アマドゥールの岩窟)でロカマドゥールの地名の由来である。聖アマドゥールはキリストの弟子の一人、徴税人ザアカイと同一人だといわれている。ザアカイはキリストの弟子となった後聖母マリアの召使として仕え、マリアの死後ガリアに来て今のロカマドゥールの地で老後を過ごしたと伝えられている。12世紀の初めごろ彼の墓が発見され、遺骸が腐敗もしていなかったことからここに聖地が造られたというのが伝説である。
その後、カトリック教会同士の聖遺物の奪い合いで墓は荒らされ、アマドゥールの遺骸は略奪されたという。17世紀ごろにはプロテスタント武装勢力による焼き討ちにあい、聖地は荒廃したというが、サン・ミッシェル礼拝堂の外壁にはきわめて保存状態のいい12世紀のフレスコ画が残っていて、聖母と天使たちがアマドゥールの墓を見下ろしている。
聖域から台地の頂上の城に向かって、さらにつづら折れの道が続いている。途中には“アマドゥールが瞑想した洞窟”などというものもあるが、その道の角ごとに人の背丈ほどの小さなシャペルがあり、イエス・キリストの生涯を描いたレリーフが祀られている。多分18~19世紀のものだろう。頂上には城といっても本当に小さなシャトーがあり、オーバーハングした崖からさらにせり出すように建てられた城壁からの見晴らしが素晴らしい。はるか対岸にロスピタレ村が霞み、門前町や渓谷がほぼ真下に見える。われわれのホテルがちょうど真下で、そら恐ろしくなる。地震のない国でなければありえない建築だ。
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