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ポン・ヴァラントレ Pont Valentré
14世紀に70年の歳月を費やして造られたというこの橋は、カオールのシンボルであり、サン・ティアゴ・デ・コンポステラの巡礼道の一部として世界遺産にも登録されている。現在は歩行者と自転車だけが通行できるが、つるつるになった敷石が橋の歴史を物語っているようだ。石灰岩の切石で積まれた橋上には3基の塔がロット川を行く船を見張るように立っていて、塔の下をくぐるアーチには重く大きな扉が取り付けられていた痕跡がある。塔に登る狭い石段は急で手すりもないため、壁に近いほうだけが磨り減っている。塔や橋の欄干には矢狭が開けられていて、まさにこの橋が町の守りであることを示している。
この橋のたもとにル・セドルLe Cedreというワイン屋があって、カオール中のワインがそろっている。ここの押し付けがましくないマダムは決して高いワインを勧めようとせず、好みを言えば7~10ユーロ程度の売れ筋のものから選んでくれる。日本への送料がワインの値段より高かったのも味わってみれば納得できる。日本で買える2,000円位のカオールワインなんか、ありゃかすだな。
サン・テティエンヌ聖堂 Cathedrale St-Etienne
ペリゴールを特徴付けるのは料理やワインだけではない。ビザンツの影響を受けたペリグー様式と呼ばれる教会建築も見逃すことはできない。ペリグーにあるサン・フロン大聖堂Cathedrale St-Frontが代表的なもので、コンスタンティノポリス(イスタンブール)のアヤ・ソフィアと同様、中央に五つの半球形ドームを正十字形に配置した特異な建築からドーム様式とも呼ばれる。ビザンツの影響というが、年代的にはイスラームの建築様式からも影響を受けているのではないか。12世紀に建てられたカオールのサン・テティエンヌ聖堂は少し規模が小さく、ドームも二つだが、その青い屋根は東方への憧憬の色に見える。
大聖堂の外観はシンプルにして重厚である。ファサードの形はロマネスクからゴシックへの過渡期の様相を示し、最後の審判を描いたタンパンの彫刻も単純だが力強さを感じる。
カオールはサン・ティアゴ・デ・コンポステラの巡礼路のうち、ル・ピュイの道の中継点で、このルートにはコンク、ロカマドゥール、モワサックなどの聖地が目白押しだ。現代の巡礼者たちは、半ズボンに上等なトレッキングシューズ、バックパックを背負って、ハイカーとなんら変わるところはないが、手にした杖やバックパックに下げた聖ヤコブのシンボル、帆立貝の殻が唯一巡礼であることを示している。
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