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カオールCahors
カオールはペリゴールの入り口である。南に大きく蛇行したロット川に囲まれた台地に町が形成されている。台地の東半分が旧市街で狭い道が入り組んでおり、全体の地形も起伏に富んでいて変化のある町だ。
ペリゴールというのは、これもまたいくつかの地域にまたがる地方名で、大まかに南半分を黒ペリゴールPerigord noir、北半分を白ペリゴールPerigord blancと呼び分けている。フォワグラとトリュフが有名だが、鴨やアヒルを使った少し重たい料理やロカマドゥール、サン・マルスラン、カベクーなど山羊の乳で作った強いチーズも知られている。
そして、これらによく合うのがヴァン・ノワールvin noireと呼ばれる濃い色の赤ワインである。メルローなどよりもっと黒味の強いオクセロワ種の葡萄は、気候が冷涼で石灰岩質のこの土地にあっているらしく、この葡萄を使ったどっしりとしたボディのワインは、ガロ・ローマの時代から皇帝への捧げものにされていたほどの名醸だったという。野の果物のほの甘い香りに加えて渋味と酸味がきわめて強く、いいものは30年から50年も熟成を続けるという寿命の長さを誇っている。カオールのAOCではオクセロワを70%以上使っていればいいらしいが、やはり100%のものこそ「黒いワイン」の称号にふさわしいだろう。
ロット川流域にはいくつものシャトーやワイン農場、ワイン農家が点在しており、生産量の少ない農家ものの当たり年は特に貴重である。カオールワインはオークの樽で1年から2年「育て」てから瓶詰めされるため、最近の大当たり年、猛暑の03年ものはまだ売られていなかった。瓶詰めされてからも3年以上置いてから抜くのがここのワインに対する礼儀というものだろう。
合う料理の幅が広いのもうれしいところで、濃厚なペリゴール料理や臭いチーズは勿論だが、ジビエや豚肉、羊肉のスパイスを効かした皿にも、カレーなどにも負けない強さを持っている。 |