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チーズの種類とタイプ
原料になる乳にレンネットという凝乳酵素を働かせて凝固させたものを籠に入れて乳清を分離したものが、すべてのチーズの最初の姿です。ヨーグルトと同様生の乳より少し保存性が高まりますからそのままでも数日は食べられます。これこそが人類が最初に口にしたチーズでしょう。現代のレンネットは、動物由来のものや植物由来のものが粉末や錠剤になっていて一定の品質を保てるようになっていますが、もともとはその動物の乳飲み子の胃に住み着いている酵素で、西アジアや中央アジアの遊牧民の一部では今でもチーズ作りのために仔山羊や仔羊の胃を干したものを持ち歩いている例が知られています。
さらに保存性を高め持ち運びもできるようにするため、水切りを念入りにし、塩をまぶしたり塩水に漬けたりしてから乾燥させるのが次の段階で、雑菌が繁殖して腐敗するのを防ぐためにいろいろ「世話」をするようになります。これが「熟成」で、チーズに硬い表皮ができるようにしたり、雑菌よりも強い有用な菌を利用したり、木炭や灰をまぶしたりと、いろんな製法が考え出されました。熟成のしかたによって保存可能な期間は異なりますが、いわゆるハードタイプの中には3年以上おいしく食べられるものもあります。現在、熟成に関しては「熟成士Maître affineur」という労働省認定の国家資格を持った専門技術者が存在します。主として生産地でその土地のチーズを専門に手掛ける熟成士もいますし、出荷後の様々なチーズの熟成を手掛けるマルチな熟成士もいます。極めて高い技術を持っていると認定された熟成士にはMaître Fromager という称号が与えられます。さらに、その中でも最高と認められるただ一人には労働省からMaître artisan fromager affineur という称号が贈られます。腕のいい熟成士がいるチーズ店はやはり繁盛していますし、チーズ好きの中には「誰が熟成したチーズか」にこだわる人たちもいるくらいです。
そんなチーズの基本的なことを少し学んでいきましょう。
・原料乳による分け方
まず、フランスのチーズは原料となる乳を得る動物によって大まかに分けられます。牛Vache 、山羊Chèvre 、羊Brebi の3種が主なもので、水牛Buffle のものもわずかながらあります。山羊乳のものは日本で人気があるためシェーブルタイプという呼び名が定着しています。それぞれの動物の品種やこれらの乳を単一で使うか混合するか、無殺菌か殺菌するか、殺菌方法は低温殺菌かマイクロフィルターによる殺菌か、凝乳酵素を混ぜる前に加温するかしないかといったこともAOPの基準では細かく規定されます。アペラシオンによっては冷凍乳の使用が認められているものもあります。
さらに、製法によるタイプの違いでいくつかに分類されます。ハードタイプとか青カビタイプとかウォッシュタイプとか言った言葉は皆さんもお聞きになったことがあるでしょう。製法によっては強烈な匂いを放ったりおぞましいほどの見た目のものもありますが、知れば知るほどチーズの世界に引き込まれていくでしょう。
では、生地の種類と熟成方法の違いによる分類を以下に解説していきます。
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