|
チーズの種類とタイプ
生産者による分類
次に生産者の違いによる分け方も覚えておくといいでしょう。同じAOPのチーズでも、作られた環境によって以下の三つに分類されます。
① フェルミエFromage Fermier :1軒の農家fermeが自身の飼育する動物の乳だけで、伝統的な製法を守って生産するチーズ。搾乳してすぐに製造するため無殺菌乳が原則です。AOC、AOPでは厳しい規制があるため生産量が少なく、おのずと高品質なものばかりになり、チーズ好きの中には「フェルミエだけが本物だ」と言い切る人もいるぐらい特に人気が高いものです。生産者や製造年月日などの情報が記入された円形か楕円形の緑色か青色のカゼインマーク(乳蛋白質プラスティック製の標章)がつけられていることで見分けられます。
また、山の放牧場で新鮮な牧草を食べる季節に放牧場の作業小屋で作られるものはアルパージュAlpage と呼んで、特に珍重されます。
羊や牛の群れを山の放牧場に連れていくことを移牧transhumance と言い、アルプスやピレネーの初夏の風物詩になっています。
② レティエFromage Laitier :Laitierは酪農場のこと。一つの酪農場または酪農協同組合fruitièreで何軒かの農家から集めた原乳で生産するチーズ。無殺菌乳、殺菌乳の両方が使われることが多いようですが、AOPの規定で無殺菌乳の使用を義務付けられているアペラシオンもあります。青色か赤色の四角いカゼインマークで見分けられます。
また、レティエにもアルパージュはあります。フェルミエと同様の伝統的な製法を守っているところも多く、そのようなものは「職人のチーズFromage artisanal 」と呼ばれ高い評価を得ています。
協同組合は通常coopérative と言いますが、 fruitière というのは、協同組合で生産したチーズを出荷する際に、原料乳を収めた量に従って農家に現金かチーズを還元するシステムがあり、「果実fruiteを返す」と言ったことが語源です。
③ 酪農工場製Fromage industriel :乳業会社の工場で生産されるチーズ。大量生産のため冷蔵タンクで保管した低温殺菌乳を使うのが原則です。工場製でAOPの認証を受けているものもいくつかあります。
|
表皮に埋没したカゼインマーク(フェルミエのルブロション) |
|